『暁の女王マイシェラ』 原題:THE VANISHING TOWER (Previous Title:THE SLEEPING SORCERESS) |
「で、それがどうした?いやならついて来ずともよい……」(16P) 「そうか」(18P) *世話を焼いてくれるムーングラムにつれない言葉を繰り返すエルリック。この男は感謝という2文字を知らないのか?と思ってたら…。 「貴公は――得がたい友だ――なぜそんなによくしてくれる……」(46P) *珍しくエルリックがムーングラムに対して素直に礼を言うシーンが。この2人の関係については、四巻の「訳者あとがき」で非常にわかりやすく解説されている。 「では、おまえがセレブ・カーナの奴僕か」 「殺されたくなかったら、そこをのけ」 「わたしは偉大なる魔術師の末裔、メルニボネのエルリックだ。この手の剣はおまえの命を取るだけではすまぬぞ、妖魔よ。これはおまえの魂を飲みほし、わたしをそれで養うのだ。わたしの異名を聞いたことがあろう。<魂の盗人>という名を」(65P) 「わたしがエルリックだと知るがいい!エルリックだと!」 「わたしはエルリック――人より魔に近きものだ!去れ、おぞましいものよ!」(67P) *セレブ・カーナ配下の妖魔に対して言った台詞。やたらと自分で自分の悪魔性を強調するエルリックに応えるように、地の文も彼を「白面の悪魔」と表現している。 「ああ、<生>とはなんたる苦しみだ!」(69P) *なんかこんな台詞ばっかりな気がしてくるが、魔剣で妖魔の生命力を奪ったエルリックは、その後で涙を流しながらこのひと言を呟いた。 「下がっていろ、ムーングラム!」 「下がっていろ、わたしのことを思うのなら!」(80P) *「エルリック!死ぬなら一緒だぜ!」というムーングラムのけなげな台詞に対する返答。渋々引き下がるムーングラムがなんとも立場なさげ。 「畜生、ストームブリンガーめ!わたしに力をよこせ!」 「もっと力を!」 「やつらの力をくれ、黒の剣よ!」 「何が不満だ、魔剣よ?わたしを助けてはくれぬのか。おまえは、こいつらが同様に<混沌>のものだから、戦いたくないのか?」(81P) *飽食した魔剣が力を吸わなくなった時の台詞。狼狽しているのが伺える。 「わたしはイシャーナを愛してはいない」 「おまえの嫉妬がそう思わせたのだ。わたしはおまえを探そうと、イシャーナの側を離れてきた。メルニボネのエルリックを動かすものは愛ではない、魔術師よ、つねに憎しみなのだ」(84P) *セレブ・カーナに対して言った台詞。大ピンチだというのにつくづく自分に酔うのが好きな男である。 「で、おまえがわたしの手を逃れたら」 「わたしも探しだしてやる、セレブ・カーナ。覚えておけ」(88P) *「おぬしが今日わしの手を逃れるとしても、誓って探し出してやるぞ」と叫んだセレブ・カーナに対して叫び返した台詞。しかしこの2人、お互い殺せそうで殺せず延々と戦い続ける。もどかしいというか不甲斐無いというか、ある意味マヌケでさえある主役と悪役だ。 「そうだ」 「わたしに感謝してくれ」 「ただし、それは無意味だ、マイシェラ女王。わたしのしたことは、わたし自身の暗い欲望を満たし、復讐への渇きを癒すためだったのだから。わたしはセレブ・カーナを殺した。他のことは偶然だ。わたしには、ロルミールも、<新王国>も、あなたのどんな理由も無意味だ……」(95P) *マイシェラが礼を言えばこのふざけた返答。最高すぎ。 「女王、あれが、単に、わたしを喜ばせようとしてのことではなかったら、わたしはあなたを殺してやりたい」 「言っておく。エルリックは決して、己が欲するものを手に入れられはしないのだ。それはもう存在しない。死んでしまったのだ。エルリックの手にするものは悲哀と罪と悪意と憎悪のみ。それこそがふさわしい。またそれをしか望まぬ」(96P〜97P) *マイシェラに対してお怒りのご様子であるが、そこから急に自分叩きに入るあたりがエルリックのエルリックたる由縁。マゾヒストぶり大爆発だ。 「戯れもほどほどにしていただこうか。もっと正確な話がききたい――貴公の言われることについては喜んで証拠をお見せするつもりだ。わたしのある種の吸血嗜好についてはどうだ?先ほどはそれに触れておられなかったようだが」 「いかがだ?」 「わたしではお役にたてないか」 「諸君、わたしは諸君が何を訊きたいのか、お尋ねしているだけだ。それから、わたしこそ、諸君が“同族殺しエルリック”と呼んでいる人間であることの証拠をお見せしよう」 「諸君、わたしの客にならぬか。わたしとの会見なら人に吹聴できるぞ……」(111〜112P) *酒場で客たちの酒の肴にされていたエルリックが、大人気なく彼らをいたぶって愉しんでいる場面の台詞。彼もすっかり有名人になって(悪名が高くなったとも言うが)うんざりしているようである。 「来るがいい、わたしの剣はなお飢えている!」(118P) *酒場でエルリックに脅された金持ちが刺客を雇って一泡ふかせようとしたが、ストームブリンガーの前に次々返り討ちに。日頃は魔剣のことを嫌っているわりに、殺戮時には昂揚で自慢げになるエルリックであった。 「放っておけ。頭か体か心が正常な者は、ナドソコルでは容赦されないのだ」(125P) *乞食の町ナドソコルで少女が乞食に襲われるのを見たムーングラムを抑えて、とても主人公とは思えないこの態度(笑)。「おぬしのシニシズムも、あいつらの所業に劣らぬいまわしいものだな!」というムーングラムの抗議も平然と受け流すあたり、「モラル」とか「良心」とか言っていても所詮自分の利益に関わりない範囲でのことだとわかる。 「こうして、わたしは死ぬのだから」 「そう、どのみちかまわぬことだ……」(130P) *食屍鬼に体力を奪われたエルリック、ウリシュとセレブ・カーナの前で諦めモードに入るの巻。いつもながらに投げやり気味ではあるが、次のピンチでは違う側面も見せてくれる。 「焼き豚にされてたまるか!」 「たとえ――神にだって!」(138P) *<燃える神>チェカラクに追いかけられながら叫んだ台詞。日頃のペシミズムをかなぐり捨てて、汗をかきながら必死で逃げるエルリックの姿を想像すると笑える。 「いとわしき者よ。さらば。汝の主が帰ってきて汝を解放することが永遠になく、この汚物の中に坐り続けられるよう祈りあげる!」 「わたしは別格だぞ。いまにあいつを殺してやる。おまえも、わたしが殺しの方法を見つけるまで、そこに放っておいてやる」(148P) *セレブ・カーナの召喚した妖魔に対する挨拶。じつに傲慢で不遜でいい感じだ。 「もし、私が死んでいるのなら、わたしはまだ幻影に悩まされているのか」(185P) *ついに自殺を試みたエルリックであったが(馬を道連れにするのはよくない、とか思うあたりが彼らしいというかなんというか)、まだまだ死ねずにガックリ。 「わたしは死にたいという以上の強迫観念はなかったぞ!」 「あなたの言によれば、わたしは完璧に<宿命>に操られていて、自分で死を選ぶ自由さえもない、ということか」 「では、このわたしを導いているものは何なのだ?そして、何の目的のために?」(191P) *マイシェラの言葉に対する抗議。レールの上を運ばれるようなRPGの主人公はこんな不満をもっているかもしれない。 「またもわたしは、望みもせぬ責任を負わされ、わたし以外のものの考えに動かされ、メルニボネ人なら軽蔑するよう教えられてきた感傷にとらえられているのだな。わかった――行こう、マイシェラ。あなたのいうとおりにする」(193P) *マイシェラに言いくるめられたことを自覚しているような台詞。自分の意思というものに関わりなく、他人に流されるまま行動するエルリックの悩みは、RPGの主人公にも現代人にも共通する? 「殺されるのも自由だぞ」(220P) *「おれは自由だ」と言いながら登場した魔物と、「わが歓待を蹴ったそこな愚か者どもを、自由に殺すがよい」とけしかけたヴォアロディオン・ガニャディアック(変な名前)たちの台詞に対するエルリックのツッコミ。 「わたしは神々にも、その争いにも飽いた」(244P) *これもいろいろ実生活に応用できそうな台詞だ。「会社」とか「学校」とかの単語を使って文を作ってみるといいだろう(何に)。 「ああ、呪われよ、呪われよ、呪われよ!」(245P) *四巻を締めくくる名台詞。嫌なことがあったときなどに叫んでみよう。 |
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