『黒き剣の呪い』
原題:THE BANE OF THE BLACK SWORD



「通せ――そなたらの主、皇帝たるエルリックだ」(29P)
*亡国のメルニボネ傭兵の陣に赴き、衛兵にこの一言。どの面さげてというか、ちょっと信じがたい神経である。


「そなたはわたしのことを、売国奴、盗っ人、同族殺し、国民の殺戮者と思っていよう、竜使いよ」(33P)
*そりゃそうだろ(笑)。現にディヴィム・トヴァーも「申しにくいことながら、さようでございまする」って答えてるし。


「ストームブリンガーは、めったにわたしを裏切らぬ、ムーングラムよ」(71P)
*そのかわり、ここぞとばかりに肝心なところで裏切るのだが。


「心ゆくまで飲むがよい、地獄の剣よ」
「やっとかちえたものだ、わたしとおまえとで」
(71P)
*ついにセレブ・カーナをしとめたエルリックがストームブリンガーに対して呟いた台詞。しかし、年増女王への気弱な愛のために主人公を延々苦しめ続けたセレブ・カーナもよく健闘したというか、むしろ多少の同情を禁じえない。


「わたしに下されたこの呪いは何だ、何なのだ?」
「まただ、ムーングラム。おお、この剣に呪いあれ!」
(77P)
「この悪魔の剣に気をつけてくれ、ムーングラム。敵も殺すが――もっとも好むのは、友や身うちのものの血だ」(78P)
*言ってるそばからさっそくエルリックの意志を裏切ったストームブリンガーに、さすがのムーングラムも顔色なし。


「よかろう、承知した。確かにいつわりはないな。残りはニコーンの城にいるわが軍に送り届けよ。さもないと、おまえも仲間も明日の朝までに、じか火で焙り殺してやる」(79P)
*市民から金を巻き上げるエルリック。おまえ主人公だろ(笑)。


「危険ですむものか。死あるのみだ」(88P)
*唐突にトルースの森を調べようと言い出し、ムーングラムが危険に反対すると笑いながらこの台詞。なんとも破滅的な性格である。


「どんな子供もときには親を憎むものだ」(88P)
*ムーングラムからトルースの森の伝承を聞いたエルリックのコメント。


「メルニボネのエルリックだ、娘御。<西部>では女殺しのエルリックと呼ばれている。で、こちらはエルワーのムーングラム。あいにくと良心を持ちあわせぬ御仁でね」(93P)
*ザロジニアに対するエルリックの自己紹介。しかし、彼にムーングラムの人品を云々する資格はないと思うのだが…。この台詞を聞いたムーングラムがどう思ったか知りたい。


「はたしてそうかと疑うことがある。だが、この剣なしでは生きてはゆけぬゆえ」
「これに感謝せねばなるまい」
(97P)
*ザロジニアの「でもそれをふるわれたのは、あなたでしょう」という台詞に対する返答。


「気をつけるがいい。わたしは宿命を背負っている」
「宿命などという代物ではないな。呪いと呼んだほうがいい。わたしは血も涙もない人間だが、わが魂の中に見るものに対しては別だ。それに対しては憐れみを覚え――涙すら湧く。だがわたしはそれに目をそむけたいのだし、そのこともわたしを駆りたてる呪いのうちだ。<宿命>でもなく、星辰でもなく、人でも、魔でも、神々でもない。わたしをごらん、ザロジニア――<時の神々>の哀れな白いもてあそびものたるエルリックを。メルニボネのエルリックは自ら、己の緩慢な恐るべき破滅へと足を向けるのだ」
(98P)
「そうだ。わたしは自分をじりじりと死に追い込んでゆく。わたしと行をともにするものもそうなるのだ」
(99P)
*ザロジニアに対し、自称「ひと殺しで、盗っ人」のエルリックが語った台詞。よくまあこんなペラペラと言葉が出てくるものだと感心せざるをえない。


「礼はこの剣に言ってくれ」
「わたしにはこの剣が必要なのだ」
(102P)
「体力を維持するために。そしていまは、あなたに力を与えるために」
「しかしこのわたしには要るのだ」
「あなたはわたしを愛しはしまい。この剣がわたしに必要なものをくれなければ。剣なしのわたしは、海にすむ背骨のない動物のようなものなのだから」
(103P)
*ストームブリンガーの力を過小評価しているのか、エルリックの力を過大評価しているのか。そんなザロジニアに対してストームブリンガーの重要性を強調するエルリックであったが…。


「そなたの言葉が正しかったような気がする。そなた、わたしがこの魔剣を買いかぶっていると言われたな」(135P)
「そう。だがわたしは、そなたがいくらかは正しかったような気がする。塚の上でも中でも、わたしはストームブリンガーを持たずに――戦って、勝った。そなたの身を気づかうゆえにだ」
「もしかしたらいつかは、トルースの森で見つけた薬草に力を頼って、この剣は永久になしですませられるかもしれぬ」
(136P)
*ストームブリンガーなしでエルリックが生活する?ザロジニアのおかげで、今までからは想像もつかない前向き発言が飛び出しムーングラムも思わず破顔。


「新たな始まりだ!」
「恋人よ、これこそ夜明けだ!」
(136P)
*希望に満ちた発言は、一巻のラスト以来ではないだろうか?それだけの間、延々苦悩し続けていたというのも凄いが。


「そう思う。ストームブリンガーは、いまやそなたの父上の武器庫で蜘蛛の巣にまみれている。トルースの森で見つけた薬草のおかげで力はあるし、目も確かだ。それに、たまにしか飲まないですむ。もう旅も戦いもいらぬ。わたしはここで満足だ。そなたと時を過ごし、カーラークの図書館の本を研究することで。このうえなにを望むことがあろう?」(141P〜142P)
*ザロジニアの家の婿に落ち着いたエルリックのおのろけ。かつての<白き狼>も、いまではすっかり牙を抜かれた犬になったような感が。


「あの地獄の剣は、二度と手にしたくなかった。何といっても得体の知れない剣だ」(146P)
*彼が望もうと望むまいと、困った時はストームブリンガーに頼らざるををえないのが辛いところ。


「さらばだ、ザロジニア。そなたへの愛は、このいまわしい剣よりも大きな力を、わたしに与えてくれる」(147P)
*あれほど「エルリックを動かすものは愛ではない」だのなんだの言っていたくせに…。変われば変わるものである。


「わたしはいまもメルニボネの民だ」
「何をしようと、その事実から逃れることはできない。それに体のことをいうなら、わたしはまだ無力だ。どんなささいな機会にも、この呪われた剣を使わねばならぬとは」
(185P)
*竜たちが蛮族を焼き尽くした後、ふと我に返って呟いた台詞。この後のオチも皮肉でおもしろい。





第六巻『ストームブリンガー』に進む

一つ前に戻る

トップページに戻る





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送