<永遠の戦士>に<黒の剣>、<法>と<混沌>、<宇宙の天秤>…。独特の世界設定で展開されるマイケル・ムアコックの<エターナル・チャンピオン>(永遠の戦士)シリーズ。その中でも代表作と言えるのが、虚弱体質の主人公「白子のエルリック」と暗黒の魔剣「ストームブリンガー」が織り成す冒険譚『エルリック・サーガ』である。
この物語は、初出が1961年(ちなみに、ムアコックはこの時22歳)という古さにも関わらず――いや、むしろそれゆえにこそ、『D&D』以降定着したRPG的な「お約束」の洗礼をうけていないため(もっとも、ムアコックの世界設定は独創的すぎるので、かりに当時からそういったお約束があっても入り込む余地はないと思うが)――今読んでも古さを感じさせない。むしろ斬新にさえ見えるほどである。
しかし、この作品が「呪われた魔剣」「法と混沌の対立」「神や精霊の召喚」といった要素で、後のファンタジーRPGに対して――『指輪物語』はもちろん別格だが――大きな影響を与えたことはおそらく間違いないだろう。なぜか畑違いの格闘ゲームにまで、某K○Fシリーズに登場する某軍人の技として「ストームブリンガー」の名が引用されてるし(ついでに言うと彼の通常技に見られる「トレイター」や「ソードオブダウン」といった名前は、エルリック同様<永遠の戦士>であるコルムとホークムーンの剣のものだ)。
『エルリック・サーガ』の内容については、訳者・井辻朱美氏の巻末あとがきにほとんどすべて書き尽くされているので、「買って、読んでくれ」としかいいようがない(さらに、エレコーゼ、コルム、ホークムーンといった他の<永遠の戦士>シリーズとその解説を読んで理解を深めればいうことはない)。ここではただ、異常にキャラの立ちまくった破滅型主人公・エルリックの吐く名言の数々を振り返るのみである。つうか、とにかく読んで<白面の悪魔>の魅力に酔え、ということだ(笑)。
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