一粒で二度おいしい硬派スポーツゲーム テコンドー (SFC) |
そんなオープニング(原文ママ)から始まるこの「テコンドー」。 |
IN KOREAN |
オープニング中、あるいはオープニング後にBボタンを押すと「IN JAPANESE?」「IN KOREAN?」という表示が出ます。 前者を選ぶとゲーム中の言語が通常どおり日本語主体で表示されます。 ということは、もうお分かりになったでしょうが、後者を選ぶとハングル文字主体になります。 試しに一度やってみましたが、当然ながら筆者にはさっぱり読めません。 なかなかに斬新な画面で、かなり印象的でした。 メッセージを英語で表記できるゲームは結構ありますが、ハングル表記はなかなか無いでしょう。 ついでに言うと審判の掛け声も韓国語(多分)です。 さすがは本格的「格闘スポーツゲーム」ですね(あんま関係ない)。 |
明日のためのアプ・チャギ(前蹴り) |
さて、ゲームモード選択のメニューには「テコンドー道場」というモードがありますのでちょっと選んでみましょう。 テコンドー道場モードには三級から初段までの4つの段階があり、異常にノリのいいアップテンポな曲をバックにトコトコ歩いてくる師範代が、それぞれの段階に応じた基本操作を教えてくれます。 煩を厭わずボタン操作を列記してみますと…。 Xボタン=頭部への攻撃 Aボタン=上半身への攻撃 Bボタン=大技での攻撃 Yボタン=連続攻撃 Lボタン=フェイント動作 Rボタン=左右スイッチ、十字キーとの組み合わせで手前or奥への移動 …というようになっています。 XボタンとAボタンを見れば察しがつくと思いますが、下半身への攻撃はなしです。 テコンドーが「足のボクシング」と言われるほどに華麗なハイキックの応酬が見られる理由は、下半身への攻撃がルール上認められてないということにありますが、そのおかげでこのゲームでも、2D格闘特有の光景である、対戦の美観を損なう事甚だしい<しゃがみ小キック連打>などとは無縁のプレーが楽しめます。 またテコンドーのルールの特徴として、上半身より頭部、頭部よりジャンプ攻撃といった具合に「派手な大技を決めるほどポイントが高い」というのがあります。 よってAボタンの攻撃よりもXボタン攻撃、Xボタンの攻撃よりもジャンプしてからの攻撃の方が、ポイントでの判定面だけを考えると有利ということになります。 「じゃあ(昇龍拳やサマーソルトキックもないし)ジャンプ攻撃をバンバン狙えばいいじゃん」と思われるかもしれませんが、ジャンプの着地に失敗してバランスを崩す事があり(選手のパラメータによる)、そこに攻撃をくらうとダウンを奪われるので要注意です(5ダウンを先取されると、ポイントで勝っていようと相手がKO寸前だろうと負けになります)。 |
ステップワーク |
ところで、さきほどのボタン操作で注目すべきはRボタンだと思います。 Rボタンを押すごとに足を組みかえて構えの左右スイッチができます。 ちなみに、特定の技を出しても足位置を組みかえる事ができます。 このへんの概念は「鉄拳」シリーズでファランをプレイした事がある人には分かってもらえると思います。 もっとも、ファランのように左右の足位置によって技が変わるという事はありませんが。 また、試合場は、通常の2D格ゲーとは違って奥行きの概念があり、Rボタンを押しながら十字キーで手前、奥への移動ができます。 この操作により、試合場を回りながらアウトボクシング的な闘い方もできます(ただし、あまりにも手を出さずに逃げ回ってる一方だと審判からペナルティを受けますが)。 ポリゴン主流の現代3D格ゲーを見慣れた方からすると大した事ないと思われるかもしれませんが、当時の水準(このゲームの発売日は1994年6月28日。その3日前にはSFC版「スーパーストリートファイターII」が、約1ヶ月後にはSFC版「飢狼伝説SPECIAL」が発売された)から見れば、これらの要素の導入は画期的なことだと思います。 さすが、「スポーツゲームのヒューマン」(このゲームの制作会社。当時はそういう定評があったらしい)ですよね。 ここで「いや、大した事ないよ」って言われちゃうと話が終わってしまうので、嘘でもいいから「わあ、それは凄いね」と言って下さい。言ってくれましたか?はい、ありがとうございます。 |
ルールを味方に |
説明書にはご丁寧にもアドバイスが書かれていますが、要はスポーツなのでルールをうまく使って試合を運ぼうという事です。 一時期の格ゲーは何か精神論めいていたというか、KO勝ちが至上で時間切れ判定やリングアウト狙いはチキンのすることだというような雰囲気もなきにしもあらずでしたが、このゲームにおいてはポイント勝ち狙いは立派な作戦です。 ていうか、技を出したりジャンプしたりする度にスタミナを消費するので、押せ押せの戦法はむしろ危険とさえ言えるでしょう。ガード状態からのカウンター攻撃も用意されてるのでなおさらです。 ということで、スタミナ残量と残り時間を気にしながらヒット・アンド・アウェイ気味に闘うのがいいと思われます。 そのスタミナ残量ですが、このゲームには体力ゲージというものがないので一見「わかんねーよ!」とか思ってしまいますが、実はゲージが無くとも見た目に分かりやすく、キャラの動きにあらわれてくるのです。 キャラはスタミナが減ってくると構えていた手が下がり、あからさまに疲れが見て取れます。 KO寸前まで追い込まれると、片手をヒザにつきながら肩で息をしていたりして、もうバテバテといった風情で痛々しい限りです。 そしてKOされた瞬間、BGMが消えると同時に「パカーン」という感じの乾いた効果音が響き渡り、スローモーションで選手はブッ倒れます。 それまでの試合が緊迫していればいるほど、この落差が面白く、特に人間同士で対戦していると、自分が負けた時でも思わず爆笑してしまうほどです。 これで試合後の礼をする時に電光掲示板を見て、実は自分の方がポイントで上回っていたりすると口惜しさもひとしお、特に残り時間が僅かだった日には「ぐわ〜、生き残っていれば勝ってたのに〜」とか思わず後悔。 そして「今度こそ無理はしないでポイント勝ちを狙うぞ」と心に誓うのですが、ついつい色気を出してKOを狙いまた敗北…と、実はこの事をわかってないのは自分だったりします(ダメじゃん)。 |
驚愕のトーナメントモード(その1) |
…とまあ、そんなこんなでこのゲームが「格闘スポーツゲーム」としてリアル路線でテコンドーを再現しようとしてる事はわかってもらえたと思う(急に文体が変わる)。 しかしだ!今まで述べた事はこの「テコンドー」というゲームの一面でしかない! もう一つの顔は、このゲームのメインイベントともいうべき「トーナメントモード」の中にある。 つうわけで道場やVSモードでのウォーミングアップがすんだら、これからはトーナメントモードに突入だ! 準備はいいか!(誰に言ってるんだ) トーナメントモードってのは、いわゆるシングルプレイで、世界大会優勝を目指すものだ。 で、既製のキャラ8人から一人を選んで世界一を目指すノーマルモードと、オリジナルの選手を作って育成しつつ世界一を狙うエディットモードの2種類のモードに分かれている。 ノーマルモードで選べる8人は、それぞれ日本各地区の代表という設定で、「現在ギターだが、密かにボーカルの座を狙っている」大技好みな18歳のミュージシャンとか、「世界一になって某大学一芸入試に合格」を目指す20歳のマージャン好きな予備校生とか、現実的な範囲で個性的なキャラが揃っている。 最近の格ゲーとかだと「いかに壊れたキャラにするか」を競っているというか、平気で「そんな無茶な」って感じのとんでもない設定を繰り出してくるので、逆にこのゲームの地に足のついたキャラは新鮮でさえある。 つうか、「職業がらか(中略)確実で安定した試合運びをしてくる」26歳エリート銀行員という設定って、逆に地味すぎて凄いと思うんだがどうよ。 ちなみに俺は頭に巻いた布がカッコいい「町道場で子供たちにテコンドーを教えている」25歳テコンドー道場師範の李龍求(り・よんぐ)がお気に入りだ。 もっとも、彼らの個性やバックストーリーはまったくゲームに関わってこないのだが…(何のための設定なんだ?)。 ノーマルモードがそういった事情でもあるし、俺としてはやはりエディットモードを選びたいところだ。 何しろこのモードはキャラの名前、外見から持ち技まで選べて、なおかつ各パラメータを自分で成長させていく事が出来るのだ。 俺はこういうの大好きなんだよ!(力説)みんなも好きだよな!?(みんなって誰だ) さあ、行くぜ!!(どこにだ) |
驚愕のトーナメントモード(その2) |
さっそくキャラを作ってみると分かると思うが…作りたてのキャラはとにかく弱い。まさにヒヨコである。 最初に教えてもらえる基本技の種類が少ない(Yボタンの連続攻撃さえ出せない)というのもあるが、パラメータに振り分けるボーナスポイントが悲しいほど足りないのがイタい。 動きも技も遅く、与えるダメージは少ない上すぐバテる、という悲惨極まりないキャラになりがちである(一点集中的に振り分けるという手もあるが、それもそれで苦しそうだし)。 こんなので日本選手権に出場して例の既製キャラ8人と闘うのだから、はっきり言ってゲームというより修行だ。 まあそれでも、幸いなことにコンティニューは無制限なので、せこくポイント狙いを追求していけばそのうち優勝できる筈だ。 そうすると、各パラメータも上がってるしボーナスポイントも振り分けられるし持ち技も増えるしでかなり楽になる。 世界大会は相手のレベルが多少高い(国内より弱いのもいる)ぐらいだから、むしろ日本選手権より簡単に優勝できるだろう。 …すると、デモでいきなり黒い道着の男たちが出てきて何か偉そうにほざくんだが、そいつらの名前が…。 北朝鮮代表の「邪」三兄弟。 …いいのかこんなキャラ出して。 このゲーム、絶対北朝鮮に輸出できないと思うわ。 |
驚愕のトーナメントモード(その3) |
さて世界一になった自分(プレイヤーキャラ)は二連覇を狙って再度国内予選に挑むが、「また おまえたちか…」のメッセージとともに例の既製キャラ達と再びあいまみえることになる。 が、苦労に苦労を重ねた一年目と違い、世界大会後にまた一段とパワーアップした自キャラをもってすれば、この二年目の国内予選はさしたる困難もなしに勝利を飾ることができるだろう。 そして優勝した主人公に師匠が最後のパワーアップを施してくれる。 能力値はデフォルトキャラと比べても遜色ないほど高くなり、Yボタン一発で5〜6連打の攻撃ができるまで強まった主人公は、「最終奥義」ってな感じで何やらコマンド技を教わるのである。 俺は初プレイの時、「まあめんどくせえからいいや」って感じでさして気にもせずに、さっさと忘れて進めたのだが、すぐにこのコマンド技の存在を思い出す羽目になった(もっとも、コマンドは忘れたままだったので思い出したところでどうにもならなかったのだが…)。 世界大会の一回戦は普通に進む。が、自分の試合が終わった後に、他の試合のデモが入り、例の「邪」三兄弟が圧倒的な強さで勝ち進むシーンを見せつけてもらえる(しかし、なぜ北朝鮮代表だけ3つもイスがあるんだ?)。 今までの大会ではこんな演出はなかった。ラストバトルを盛り上げようという粋な趣向か。 続く二回戦。まずは三兄弟の一番手、スキンヘッドの邪烈と闘うことに。 なかなかに強いが、こいつはまだ普通の敵の延長といったところ、現在の自分キャラの力をもってすればそれほど手こずる相手ではないだろう。 準決勝の相手は長髪の色男(に見える)邪鋭。 ここで、唐突に試合中のBGMが消えて観衆のざわめきだけをバックに、効果音だけが響き渡るという、これまた新手の演出が。 ここまでして対決ムードを盛り上げようとするだけあって、こいつはかなり強い(ような気がする)。 …だけでなく死にそうになると乱舞してきやがる。 …そう、実は前述したコマンド技ってのはこの乱舞のことだったらしい。 これにはまいった。まさかこのゲームでそんなカッ〇ァン親子チックなことをしてくるとは思わなかった。 こっちはすでにコマンドなんか覚えちゃあいないのに、相手は容赦なく乱舞をバシバシ決めてきてくれる。 この乱舞をくらうと、たいがいの場合KOされるので、最初は即死決定の技かと思っていたが、喰らってもまだ生きてることがあったので、どうもそうではないらしいということが分かった。 が、生きていたところで大ダメージを受けた瀕死の状態になることには変わりないし、乱舞の一発一発にポイントが入るので(画面上に凄い勢いで数字が表示されていく)、どっちにしろ判定でも圧倒的不利になることには変わりない。要はくらうなってことだ(言うだけなら楽)。 それでも、ここまで来て尻尾をまくのも業腹な話だし、叩きのめして決勝に駒を進めよう。 |
驚愕のトーナメントモード(その4) |
決勝の相手は前髪で顔半分が隠れた悪人面の邪U。 どうでもいいがこいつら、三兄弟ってわりにまったく似てない。 …一夫多妻制?(おい) さて、試合開始というのに、宮本武蔵でも気取っているのか、なかなか出てこない邪U。 ようやく出て来たと思ったら…。 いきなり審判にキック!! 電光掲示板にめり込む審判!! ええ!?どうなってるの!?と思うヒマも与えず、不意打ちをかけて来る邪U。 そして、画面下のダウン数表示が点滅したと思いきや体力ゲージに変貌。 なんと、今までのポイント制のスポーツはこのための伏線で、実は格ゲーを作りたかったんだと言わんばかりに、問答無用のデスマッチに。 こんな展開を誰が予想できよう? あっけにとられるプレイヤーをよそに、物凄い勢いで攻撃してくる邪U。もう強い強い。 狂ったように技を連発してくるので、うっかり画面端になんか追い詰められてしまうと、そのままサンドバッグにされてしまうだろう。 そんなわけで上手い人を別にすれば、たいていの人は初対決ではボコられると思う。 で、コンティニューすると分かると思うが、どうも最初の不意打ちはかわせないっぽい。 まさに卑劣先制撃。←『水滸演武』プレイヤー限定のネタ。 しかも例によって例のごとく、やっとの思いで体力をあとチョイまでもっていっても、乱舞くらって殺されるしな。 初プレイ時に1時間以上に渡って殺され続けた(アホだ…)時には、正直なところ「もう一生勝てねえんじゃねえか?」と思ったね(遠い目で)。 しかも夜中の3時過ぎで眠い目をこすりながらやっていただけに、「もうすぐ4時だよ、どうしよう」「寝るか?でもここでやめるのもったいないし…」と葛藤しつつ(本当にアホだ…)。 が、気が付くと何とか跳び蹴りで止めを刺していた。エンディングは全く記憶にないが、跳び蹴りで奴を倒した瞬間の光景は今でも鮮明に覚えているね。 …とか書くと、「本当かよコレ?作りじゃないの?」とか思うかもしれないが、そんな事はない。 いや、初プレイの時だけなら、もしかして眠気と疲労で幻覚を見たのかもしれないと不安になるが、このたびもう一回トーナメントモードをやり直して、ちゃんと最後まで確認し直したので、ここに書いたことは全て事実だと自信をもっていえる。 しかも、有難いことに人間には学習機能というものがついているので、あいかわらず凶暴な強さを誇る邪Uだったが、セカンドプレイではそれほど手こずらなかった。 というわけで、未プレイの人のために、僭越ながらラストバトルのアドバイスをしてみようと思う。 …え?そんなもん書いて誰か参考にする奴いるのかって? うるせえなこの野郎!んなこたぁ俺も分かってんだよ!いちいちツッこむんじゃねえ!!(逆ギレ) まず、奇襲攻撃をなんとか凌いだら、とりあえず距離をとって逃げ回りながら体力を回復させよう。 スポーツからデスマッチに変貌したことで、大きく変わったことは、ポイントやダウンがなくなり、とにかくどちらかの体力が無くなるまで試合が終わらないという点である。 「何だ、当たり前じゃないか」というなかれ。この差は大きい。 場外に逃げても減点されないし、どれだけ長い間逃げても警告一つうけない。カウンターやクリティカル、よろけへの追撃でもダウンが奪われない。とにかく最後まで立っていられれば勝ちなのだ。 恥も外聞も捨てて、とにかく逃げ回ってみよう。 そうすれば邪Uは、狂ったように技を出しながら追いかけてくるが、なにせ技を出しながらなのでなかなかこちらに追いつけない。 だけでなく、このゲームの「技を出すごとにスタミナ消費」というルールを、剥き出しの体力ゲージを使ってプレイヤーに目で確認させてくれる。 要は、逃げてれば相手が勝手に疲れてくれるってことだ。 これさえ分かってしまえば怖い事はない。こちらは逃げ回りながら体力を回復し、疲れた相手を攻撃するのだから、先制攻撃でのビハインドぐらい簡単に取り戻せるはずだ。 邪Uのなにかイリーガルなクスリでもやってるんじゃないかという感じの暴れっぷりに多少のダメージを受けるかもしれないが、とにかく「困ったら逃げる(ただし、画面端に追い詰められないよう注意)」という鉄則さえ守っていればどうにかなるだろう。 …ただ、前述したとおり、相手を追い詰めると乱舞が待っているのが問題なんだが…。 まあ、何とかなるさ。どうせコンティニュー無限だし(結局それか)。 ちなみに、エンディングの記憶がないと先ほど書いたが、それは初プレイ時が眠気と疲労のため意識が朦朧としていたからではなく、単にエンディングがなかったからだということがセカンドプレイで分かった。 邪Uを倒したら「おめでとう」とか「世界一」とかの一言もなくいきなりスタッフロール、そして終了。以上。 …とことんプレイヤーの予測を裏切ってくれるゲームだ。 |
つわものどもが夢のあと |
ということで、このゲームがまるでジキルとハイドのごとく、大人しい「格闘スポーツゲーム」の顔の裏に凶暴なバカゲーの貌を秘めた二面性のあるゲームだということがおわかりいただけたことだろう。 しかし、前にも述べたとおり(当時の水準からすれば、の話ではあるが)随所に光る部分があるし、派手な必殺技がない分、間合いとタイミングの取り合いという地味シブながら熱い攻防になるので(カウンターとクリティカルという要素のおかげで気がぬけない)、現行機種で今風にリメイクすれば相当いけるゲームになるんじゃないかと…。 まぁ、もうヒューマンねえから無理だけどな(オチ)。 |
レア企画(?)・デフォルトキャラ一覧表 |
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