『ストームブリンガー』
原題:STORMBRINGER



「またも、おまえを使わねばならぬか、ストームブリンガー」(21P)
「いまこそ、われらは、死以外に分かつものがないほどの絆で結ばれている、と言わねばなるまい」(21〜22P)
*ザロジニア捜索のため、武器庫に封印していたストームブリンガーを再び帯びたときの感慨。


「おそらく、その<死せる神>とやらを倒す方法があるはずだ……。しかし、このことは言っておく、セピリズよ――機会に恵まれれば、わたしはその神に帰還を後悔させてやるぞ。なにしろそやつは、わたしを真の怒りにかりたてる、ただひとつのことをしたのだからな。そうして、メルニボネのエルリックとその剣ストームブリンガーの怒りは、世界をも滅ぼすと知れ!」(72P)
*<死せる神>ダルニザーンに妻をさらわれて怒り心頭のエルリックが、セピリズに対し打倒ダルニザーンを宣言した台詞。


「それこそ望むところだ」
「それなら、それでいい」
「わたしが、後世に思い出してもらいたがっていると思うのか――邪悪と破壊と破滅の思い出の生きのびることを――友殺し、女殺し、そうしたもろもろの名の思い出の生きのびることを望むと思うのか」(81P)
*ダルニザーンに、剣を渡さねばこの世界が消滅して自分たちが存在しなかったことになると言われたときの返答。実に捨て鉢でいい台詞だ。


「ええ、黙れ!」
「神のくせに、御身はつべこべしゃべりすぎる。剣をうけとって――わたしに妻を返してくれ!」
(82P)
*世界の消滅にこだわるダルニザーンに苛立って叫んだ台詞。エルリックの愛妻精神も相当である。


「そうだな、わたしは前から思っていた。この世には正義などないと」(87P)
*ダルニザーンの言葉についてセピリズに話を聞き、思わず微笑しながらもらした台詞。が、その直後のセビリズとの会話から、本当は「正義があってほしい」と思っていることが伺える(偽悪者的というか…)。


「さあ、ジャグリーン・ラーン、復讐するのはけっきょく、おまえか、わたしか?」(166P)
「おまえの燃えるような鎧をひと突きできるかどうか。いまはひと突きの時間しかない。いまはさらばだ、神政官よ、だが覚えておけ。たとえ、おまえが東部の知られざる国々を含む全世界を征服したとしても、いつかきっと、この剣におまえの真黒な魂をのませてやる」(168P)
*まさに間一髪のところでストームブリンガーに助けられたエルリックが、ジャグリーン・ラーンに向かって吐いた台詞。セレブ・カーナもそうだったが、悪役特有の残酷趣味がエルリックを助けている感が(それも<宿命>のなせる業か?)。


「この剣は<混沌>を倒すため、<混沌>が鍛えたもの。そうしてわたしのさだめもそのことだ。この世が煮えたつ気体と化しても、わたしは生きつづけるぞ。<宇宙の天秤>にかけて、<法>に勝利を得させ、地上に新時代を来させることを誓う」(172P)
*四巻あたりからエルリックの<混沌>離れ、<法>転向が目立ち初めていたが、ついに最終巻にきて完全に<法>のために戦うことを宣誓。『真・女神転生』でいえばカテドラルの最終決戦に入ったようなもので、もはや後戻り不能である。守護神のアリオッチにもケンカ売っちゃったし。


「わたしはこの責任が気に入らぬ」
「<死せる神>と戦ったとき、あいつは、神々も人間も、地上の真の歴史がはじまる前に人形劇を演じるにすぎない影のようなものだ、そののち人間は自らの手で運命を見いだす、と言ったではないか。そのあとセピリズはわたしに向かって、<混沌>に楯ついて、わたしの知っている世界を破壊せねばならぬ、さもなければ、歴史は二度とはじまらぬ、<宿命>の大目的ははばまれてしまうと言った。だからこそ、わたしは二つにひきさかれつつも、宿命を成就するものたらざるをえない――心の平安を知ることもなく、休みなく人や神々、<混沌>の物質と戦い続け、この時代の死をもたらし、はるか先の夜明けの時代に、魔術も<上方世界の神々>も知らぬ人々が、もはや<混沌>の主力の侵入せぬ世界を動きまわり、そこでは正義が哲学者の頭の中だけの空論でなく、事実として存在することになるであろう、そのために動かねばならぬのだ」(191P)
「こうして運命は、<法>がこの世を支配するための殉教者にエルリックをしたてるわけだ。友も敵もひとしなみに殺して、魂をすすって、必要な力を与えてくれる剣を配して。そしてわたしに悪と<混沌>を倒せとて、悪と<混沌>に縛りつける――だが、わたしはそうやすやすと言いなりになる頓馬にはならぬし、嬉々として犠牲になるつもりもないぞ。そうとも、わたしはいまもってメルニボネのエルリックなのだ。運命はわたしを大いなる悲惨の潮に押し流し……」(191〜192P)
*<混沌>の大侵攻にわずかばかりの戦力で抵抗する羽目になったエルリックが一人で延々とこぼし続けた愚痴。途中で途切れているのは「ひとりごとを言ってらっしゃいますのね――」とザロジニアからツッこまれたため。


「そなたを愛している、ザロジニア。信じてくれ、事情がわずかでもゆるせば、いまごろわたしはそなたとともにカーラークにいたろう。しかし、そうはいかぬのだ――そなたは、わたしの役割り、わたしの運命、わたしの宿命を知っているだろう。そなたのもってきてくれたのは慰めではなく悲しみだ。もし、この一件にめでたい決着がつけば、われらは喜びの中でまた会えるのに――いまのような苦しみでなく、な!」
「おお、ザロジニア、われわれはめぐりあわねばよかった、結婚しなければよかったのだ。いまのわれらは互いを傷つけあうばかり。われらのしあわせのときは短かった……」
「ありがとう――しかし、いまは愛を語るときではない。目の前の問題が大きすぎてそれどころではないのだ。そなたもわたしのように考えてくれ、これ以上、事態をややこしくするな」
(193P)
*大仰な言葉でザロジニアに語りかけるエルリック。この後、ザロジニアが寝台の上のストームブリンガーを指して「もうひとりの女がまたあなたとお床をともにしていますのね」と名言を吐く。


「昨夜のそなたの言葉どおりとしたら、葬送の真紅の服をまとえばよかったものを」
「この悲劇の場には、愛のわざも優しい言葉も似つかわしくない。愛は深くつよく、行いにこそあらわれなくてはならない。わたしから気づかいの言葉を求めるな、ザロジニア、ただ、あの夜々――わたしたちの心臓の鼓動がまじりあってひびく以外になんのさまたげの音もなかった、あの夜々のことを――思い出してくれ
(197P)
「愛するものよ、ともに波止場に行こう。行って、ここの文明化されぬ輩を、われらのこの雅やかさで驚かせてやろうではないか。恐れるな――わたしは今日の戦いで死にはしない――<運命>はまだわたしを用ずみにしていない。母が子を守るように守ってくれるはずだ――こうしてわたしは、すべてにけりがつく日まで、えんえんと、悲惨と困苦のかぎりを見つづけるのだろう」(199P)
*出陣前、ザロジニアとかわした言葉。天野喜孝氏の挿絵が印象的。


「それはわたしの兵たちのために祈ってくれ」
「あそこで出あうものたちに対して、わたしより命の保証がないのだから」
(202P)
*「さようなら、エルリック――慈悲深い神さまがまだこの世に残っているとしましたら、その神さまがあなたをお守りくださいますように」というザロジニアの言葉に対する返答。そう、彼の言うとおり主人公にはストーリーの加護があるが、名もない兵卒たちは危険の前にただ死ぬのみである。


「しかし、貴様の言うとおりかどうか調べるまえに、少なくとも貴様の命はわたしがもらった。わたしの剣もわたしも活力がほしいところだ――ジャグリーン・ラーンの魂を満喫するまえに、貴様のを食前酒にしてやる!」
(217P)
*ジャグリーン・ラーン配下の将に対する死刑宣告。で、「食前酒」を味わったあとの台詞が次。


「どのみち貴様は地獄の底に落ちるさだめだった」
「それを、このわたしはいくらかの役にたててやったのだからな」
(217P)
*これよこれ!この倣岸で冷酷な物言いこそ、俺のエルリックに求めてるものよ!(笑)


「あの呪われた悪魔の申し子め、またしても小癪なまねを」
「貴様のおしえてくれたことに礼をしよう――」
(218P)
*指揮官からジャグリーン・ラーンの居場所を聞き出した際の台詞。このクソ忙しい時にも相手をいたぶる余裕を忘れないのが素敵。


「もしわれらが神々の玩具だとしたら」
「その目的はほんとうに、より大いなるものだろうか――神々自身、玩具で遊ぶ子供にすぎないかもしれないのに?」
「わたしは、この世がわたしのことを忘れてくれることだけが、のぞみだな」
(225P)
*この期に及んで不毛な発言を繰り返すエルリックに、一巻では死ぬ所を助けてくれたストラーシャも呆れ気味。


「こいつをどけてくれ、わたしの剣が下敷きになっている。あれがなければ、わたしは死ぬ!」
「さ、諸君、つづくがいい。わたしはこの木が百万本あろうと料理してみせる!」
(239P)
*モルダガの城を守る楡の木が倒れてきて魔剣が下敷きになったときの台詞と、手に取り戻したときの台詞。あまりの落差に周囲も驚いた。


「諸君、いまこそメルニボネの古えの民がいかに人と魔をたいらげて、この世を一万年の長きにわたっておさめてきたかを見るがいい!」(240P)
*祖先を彷彿とさせるエルリックの姿は、ムーングラムを畏れさせるに充分だった。


「またしても」
「またしても。これには終わりがないのか?」
(243P)
*躁と鬱の落差が激しすぎるという気もするが、つい先ほどまでとはうって変わって泣きながらこの台詞。ストームブリンガーのせいなのか、その力にすぐ溺れるエルリックのせいなのか。


「あそこの船をご馳走になるまえに、剣に餌でも与えてやるか!」(254P)
*単騎で斬り込み、<混沌>の陣営を蹂躙する際に叫んだ不敵な台詞。この時、重武装の敵兵を頭から真っ二つにした上、鞍と馬の背骨まで切り裂くという離れ業を披露。


「メルニボネのエルリック見参。お命をいただきにきた!」(256P)
*<混沌の楯>の効果を体感するやいなや、ピアレー神に対して早くも勝利宣言。気弱な日常と強気な戦闘時のギャップもエルリックの個性のひとつだろう。


「あいつに、またしても大きな借りができた」(257P)
*ジャグリーン・ラーンいうところの「おぬしへの贈りもの」を見たエルリックが呟いた言葉。


「ほかになにか見えるものがあるか、ムーングラム。世界が<混沌>の足もとにふみにじられたというのに。わたしにどうせよというのだ?希望と笑いの日々、平和に老年をむかえ、子どもらがわたしの足もとでたわむれる日々を待ちのぞめというのか」(264P)
「なにをなげくことがあろう、むだなこと。わたしはみずからの意思でうごくことなどできないのだから。わたしを待つ運命がなんであれ、それは変わりようがない。わたしたちののちの人類は、せめておのれの才覚で運命をあやつっていけるといいが。わたしにはそんな力はない」
(264〜265P)
「論理!世界は論理を求めて叫んでいる。わたしに論理はない。が、わたしはここにいる。頭脳と心と五臓をそなえた人間、偶然、ある種の元素がよりあつまったにすぎぬ人間として。世界には論理が必要だ。とはいえこの世のすべての論理は、幸運なまぐれあたり以上のものではない。ひとは苦労して注意深い思考の網を織りあげる――が、また、でたらめの模様を織りあげておなじ結果に到達するものもいる。賢者の知恵とてもしょせん、そんなものだ」(265P)
*ムーングラムから「向こう見ずで冷笑的」と評されたエルリックの言葉。「犬儒派どの」の面目躍如である。


「それをおききして心づよいかぎりだ、ドンブラス神よ。けっこうです。おおせのとおりいたしましょう。そうすれば、なにはなくとも好奇心の満足だけは得られましょう」(278P)
*<法>の神ドンブラス神に対しても皮肉な態度を貫くエルリック。先祖代々<混沌>に仕えてきただけに、<法>の側で戦うことになっても素直に服従できないらしい。


「剣をとってくれないか。あいつが盗みとった力がほしい」(279P)
「わたしが抜くまえに部屋を出ろ」(280P)
*ムーングラムにストームブリンガーを取ってきてもらう台詞と、持ってきたときに警告した台詞。この難儀極まる剣(と、その持ち主)のそばにいるムーングラムのスリルこそ思うべしである。


「おまえはメルニボネの皇帝をまねようとしたのではなかったか。おまえはその血すじをひくエルリックを嘲り、拷問し、妻をさらった。おまえは、彼女の体を、世界の残りの部分と同じ地獄のかたちにゆがめてしまった。おまえはエルリックの友を殺し、不逞にもかれに挑戦した。しかしおまえは何ものでもない――エルリックがつねにそうであったように、おまえも手先にすぎなかった。さあ、虫けらめ、メルニボネの民が世を統べていたころ、おまえのような成り上がりものをどのようにじわじわと責め殺したか、味わうがいい!」(332P)
*つもりにつもったジャグリーン・ラーンへの借りに対して、たっぷり利子をつけて返すエルリック。わざわざムーングラムの剣でなぶり殺しにするあたり、もはやどっちが悪役かわからない(笑)。


「意味もなく、構造もないのか。では、なぜわたしは、このいっさいを身にうけなければならなかったのだ?」
「わたしがやっとやすらぎを得ようかというときになって、貴殿はまたも混乱するようなことを言う」
「わたしは妻を失い、世界を失い――それがなぜなのかが、わからぬのか」
(328P)
*「意味といわれたな、エルリックよ。そんなものを求めなさるな。そのみちの果てには狂気がある」物語も大詰めになってセピリズから強烈な台詞を頂戴するエルリック。抗議するような語調になってしまうのも無理はない。


「少なくとも何かは存在するのだ。もしこれが啓示なら、心やすまる啓示といえる」(331P)
*紆余曲折ありつつも、ついに<運命の角笛>を吹きならし、最終目的を遂行したエルリックの述懐。最後の最後にきて、ようやく彼もエンディングに相応しい達成感をおぼえたようで何より。
この後、最後にもう一言だけエルリックの台詞がある。興味のある人は読んでみよう。






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