第一巻『メルニボネの皇子』
(原題:ELRIC OF MELNIBONE)



「おそらく母の子宮から出るとき、わたしは死ぬべきだったのだ」(40P)
*恋人の前でこんなことを言う主人公も珍しいと思う。


「力を蓄えておく薬をイムルイルに置いてきたので、あれを飲まねばならない。このままなら、あと一、二時間で体力が弱り始めるだろう。体力のなくなったわたしの姿は前に見たことがあるはずだ、サイモリル」(42〜43P)
*のちのち読者にも見せてくれるのでお楽しみに(何が)。


「よくやったぞ、いつもながら、ドクター・ジュスト」(53P)
*審問長官のドクター・ジュストに対するねぎらいの言葉。メルニボネの日常が垣間見える台詞である。


「わたしは喜んで溺死するつもりだ、ストラーシャ王よ」
「夢だ」
「希望の夢で自分を欺いている」
(86P)
*危うく死ぬところを助けてもらってラッキー!なシチュエーションだというのにいきなりこの調子である。素直に喜んどけよ。


「いや、特にお願いしているわけではない。これが現実で実際にしゃべれるのなら、そう望んだであろうことを口にしているにすぎぬ。しかし、まあ不可能だろう。もう私は死ぬのだ」
「何という悲惨な苦しみに耐えねばならないのか。己れの死を認めることさえ、いまや否定せねばならぬとは……」
(87P)
*このネガティブっぷり!ストラーシャ王とのこの一連の会話を初めて読んだ時に、「この主人公、最高!」とエルリックに魅了された。


「では、おまえが治めてほしいと望んだように治めよう、従弟よ」
「つまり、イイルクーン皇子、おまえがわが新しき統治の恩恵をまっさきに受けるのだ。嬉しくはないか?」
(102P)
*珍しくメルニボネ皇帝らしい態度に出たエルリックの強気発言。皮肉っぽくていい。


「よし。それではイイルクーン皇子、今宵、宴に出席していただこう。ヴァルハリク隊長が、その命でわれわれを楽しませてくれる」
「ドクター・ジュストがこのヴァルハリクの肉体をバラバラに切り刻み、それを御身が宴で味わわれるのだ。隊長の肉の料理のしかたは御身にまかせるぞ。なまのまま食っていただこうとは考えておらぬ、従弟よ」
(107P)
*で、「メルニボネ精神をうけつぐ」処遇を思いついたエルリックの台詞。人に罰ゲームをさせる際などに応用してみたい。


「わたしは生きているべきではない」(115P)
*なにかあるとこれだ。


「わたしはサイモリルよりも己れをかまい、それを“モラル”などと呼んでいた」
「わたしは己れの感性のみを確かめていた。良心は確かめずに」
「結局、人は己れの行為によってのみしか自己を判断できないものだが」
「わたしは己れの行ったことのみに目を向けていた。行なおうとしたことや行ないたいと思ったことには目を向けずに。そして、行なったことといえば、概して愚かで、破滅的で、どうしようもないことばかりだった。イイルクーンがわたしを軽蔑したのも無理はない。そして、それゆえにわたしはかれを憎んだ」
(116〜117P)
*自省的を通り越して自虐的なエルリックの嘆息だが、実際の人間生活にも通じるものを秘めているようにも思われる。


「何と愚かなことを!神々に挑むとは何という愚かなことを!」(148P)
*<海と陸をゆく船>の快速ぶりにすっかり有頂天になったエルリックが<根の下の土の王>グロームの名を口にした途端、そのグロームに発見され大ピンチ…な状況で思わず発した台詞。調子に乗りすぎてミスをしたときには、この「何と愚かなことを!」で決まりだ。


「アリオッチよ、アリオッチ、わが王アリオッチにこの血と魂を捧ぐ!」(178P)
*今後、殺戮のたび繰り返されるこのフレーズが初めて口にされた。主人公が魔神に仕えているという設定もかなり型破りだろう。


「ここの沼地はどうも私を呑みこみたいらしい」
「わたしを捨てて行ってくれ、ラッキール」
(215P)
*こういう普通な台詞があるとかえって珍しい。


「許さぬ」(222P)
「さあ、イイルクーン」
「二人で片をつけねばならなくなったようだな」
(223P)
*イイルクーンとの決戦時の台詞。なんか普通の主人公みたいだ。


「ストームブリンガー」
「ストームブリンガー」

「ストームブリンガー!」
「ストームブリンガー!」
(224〜225P)
*記念すべきストームブリンガー初登場シーン。一巻のクライマックスだけに「ストームブリンガー」連呼のあとの文も出色のものがある。


「魔剣よ、わたしはおまえの操り人形ではない。われわれが一体となるのなら、互いを正しく知ってからにしろ」(226P)
「殺してはならぬ!」
「おまえたちの慰みとして、かれを殺すつもりはない」
「おまえが主ではない」
(229P)
*ストームブリンガーに命令するエルリック。ここで「以後はかれの命ずるままになるだろうとさとった」が、それは早計というものだった。


「おまえはうじ虫のようなやつだ、イイルクーン。しかし、それはおまえの罪ではない」(231P)
「望みをかなえたいのなら、うじ虫であることをやめたらどうだ、従弟よ」
「おまえはすべてに手を焼くのだな」
(232P)
*イイルクーンに対し、ここぞとばかり言いたい放題のエルリックだが、教えさとすような調子なのがいかにも彼らしいところか。


「わたしは愚か者ではない。わたしはエルリックだ。そうしなければならぬのだ、サイモリル」
(245P)
*「その行為は愚かです――イイルクーンをまたお信じになるなど犯罪とかわりませぬ」というサイモリルの台詞に対するエルリックの返答。会話の後の「われわれは、己れに最も深く関わることについてのみ、はっきりと確信をもって誤るのだろう」という文が痛い。


「メルニボネに戻るときは、わたしは新たな人間となっていることだろう」(248P)
*一巻を締めくくる希望に満ちた台詞。このシーンと二巻の冒頭とのギャップが凄い。





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